人気セレクトショップ、エストネーションのメンズ・バイヤー中森博一、スタイリスト菊池陽之介、ファッションにも一家言ある時計ジャーナリスト篠田哲生が鼎談。彼らが語る腕時計とファッションのルール、そして「ロイヤル オーク オフショア」と「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の魅力、似合うスタイリングとは。
2021年 12月23日
Photos:Koutarou Washizaki - Stylist:Yonosuke Kikuchi - Words :Tetsuo Shinoda
篠田:僕は時計専門誌だけでなく、ファッション誌でも時計企画を担当することが多いのですが、ファッション企画でも、必ず時計がスタイリングに入るようになりましたよね。
菊池:特にここ10年で顕著になりましたね。時計をスタイリングに取り入れると、人間性とか趣味性が見えてくる。ファッションをトータルで見たときにも説得力を増すので、編集者からも時計をスタイリングに組み込むように言ってきますね。
中森:私もバイヤーになる前はスタッフとして店頭に立っていましたから、お客様がつけている時計を見て、嗜好性を探ることは多かった。今でも客層を想定する時はつけている時計もイメージし、そういうお客様に似合う服という目線で買い付けすることはよくあります。
篠田:ますます時計とファッションは切り離せないものになっていますが、ご自身の中での“時計×ファッション”のセオリーってありますか? ちなみに僕は絶対的にサイズ感なんですよね。袖口と時計のバランスだけは絶対に譲れない。シャツなら薄いドレスウォッチで、ニットやカットソーなら厚めのスポーツウォッチ。だからどんどん時計が増えていく。
中森:僕は仕事柄、スーツなどを着る機会が多い。だからシャツの袖口を時計が邪魔してしまう姿は、ちょっと好まないですね。ケースの厚さはかなり意識しますし、レザーストラップを選ぶことも多いかな。
菊池:時計を目立たせ過ぎないことを意識します。時計が前に出ちゃっているのではなく、付けこなせているかどうか。もちろん高級時計はどうしても人目を引きますが、全体を通して悪目立ちさせないというか、コーディネートの中に馴染ませていくのが好きですね。
篠田:そうなんですよね。高級ブランドの時計だったらなんでも正解というわけでもない。カジュアルなスタイルにラグジュアリーウォッチを合わせて格上げするのもいいし、逆にドレッシーなスタイルにカジュアルウォッチを合わせてハズすのも楽しい。
菊池:そう。時計×ファッションは、単純な話じゃない。やっぱりバランス感であり、センスの話になってくる。
篠田:だから、街でも人間観察しちゃいませんか? 僕の場合は、まず時計に目が行って、そのあとにファッションを見る。時計使いが上手い人って、パンツのサイジングとかタイのチョイスが上手い人が多い印象がある。ちゃんとトータルで、アイテムを考えている感じがします。
中森:今でもヘルプで店頭に立つことがありますが、菊池さんが先ほどおっしゃっていたように、“時計が前に出過ぎていない”人の方が、逆に目を引きますね。
篠田:高級時計はステータスを示すものであるし、せっかくいい時計を買ったのだから、褒めてもらいたいという気持ちもわかる。そこをぐっと抑えられるか。そこが大人のたしなみってことなんでしょう。
篠田:1972年に誕生した「ロイヤル オーク」が、ラグジュアリースポーツというジャンルを切り開きました。そもそもスポーツウォッチというのは、クロノグラフであれ、ダイバーズであれ、何か理由があって生まれた実用品でした。しかしロイヤル オークは美しく着飾るためのスポーツウォッチ。ドレスウォッチのように美しいデザイン、美しい仕上げ、そして薄型のケースを持っている。それはかなり前衛的な考え方だったわけです。そして、ロイヤル オークの誕生20周年となる1993年にデビューしたのが、よりスポーツ感を強めた「ロイヤル オーク オフショア」なんです。
菊池:この「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」は初代の復刻モデルなんですよね。当時の感覚からすると、こんなに大きくて分厚い時計を作るなんて、かなり勝負をかけたんでしょうね。でも結局、時代を作っていく。というか、時代が追いついたわけですよね。しかもメタルブレスレットの存在感も強い。このキラッと輝く感じを生かなら、ざっくりしたニットやライダースジャケットなどが合いそう。ジュエリー感覚でちょっと見えるくらいがいいと思う。
篠田:ロイヤル オークのシリーズは、ブレスレットの斜面のポリッシュ仕上げが凄く綺麗なんですよ。確かにジュエリー感覚というのはわかるなぁ。
中森:こちらのラバーストラップのモデルは、スモークブラウンのダイヤルが凄く綺麗ですね。オフのスタイルに似合いそう。ラグジュアリーなスウェットとか、相性がよさそうですよね。スニーカーと合わせてカジュアルなスタイリングで楽しみたい。
菊池:プッシュボタン周りはモダンで力強いデザインですね。スポーティなアイテムと合わせたくなりますが、ダウンとかフリースに合わせても、気が抜けた感じにはならず、時計がぐっと締めてくれる。今は街もフィールドも境界線が無くなっている時代なので、仕事も遊びも、自由に楽しむ人に似合いそうな時計ですね。こちらのブルーダイヤルのモデルは、ベタですけどインディゴデニムに合わせたい。
中森:綺麗目のスタイルなら、ポリエステルやナイロン系のシャカっとしたパンツとも相性がよさそうです。
篠田:しかも2021年モデルから、新しいストラップ交換システムを採用することで付属のラバーストラップと簡単に交換できるようになりました。様々な時計ブランドがこういった試みをしていますが、正直言ってオーデマ ピゲのシステムが一番簡単です。
菊池:なるほど。どちらのモデルもブラックのラバーストラップが付いてくるんですね。定番色があると使い方が広がりそうですね。
篠田:「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以降、CODE 11.59)は、2019年にデビュー。この時計の魅力は、巧みなケースデザインです。正面から見ると端正なラウンドケースですが、サイドから見るとアイコニックな八角形のミドルケースが立体感を作り出す。例えばシャツの袖口からちらっと見えたときの顔と、正面から見たときの顔が全然違うというところも含めて、高級時計の新しい表現方法を確立しています。しかもラグが中空構造になっているので、ミドルケースの磨き込みも細かい所まで見える。このモデルは今年の新作ですが、このミドルケースをセラミックで作っています。
中森:ピンクゴールド×ブラックセラミックのコンビは、華やかで上品。しかも厚みが少ないので、ジャケットやスーツ、綺麗なコートと合わせたい。シャツブルゾンもいいかな。いずれにしても、色々なスタイリングに馴染みそうですし、さりげなく高級時計を楽しんでいる感じがある。ホワイトゴールド×ブラックセラミックのコンビは、スポーティな雰囲気もあるので、オンのスタイルはもちろんですが、ダウンなどのオフスタイルとも兼用できそうですね。
菊池:このデザインと高級感なのに、ラバーのストラップというのも面白い。普通ならアリゲーターストラップを選びますよね。ところがストラップでスポーティな雰囲気を入れてくる。しかもダイヤルのグラデーションも美しい。この時計は何度かスタイリングで使いましたが、ドレスにもカジュアルにもはまってくれるし、手元で新しさを感じさせることができるんです。かつてのロイヤル オークが提案したのは“オンとオフの融合”でしたが、再びCODE 11.59によって、新しいミックススタイルを提案してきたってことですね。
篠田:クロノグラフモデルのケース径は41㎜でケース厚は12.6㎜。これならシャツの袖口にも収まるでしょうし、スタイルを選ばないサイズ感といえます。シンプルな3針モデルもありますが、ダイヤルのグラデーションに凝っていて、ブルーの発色が本当にきれい。暗い所だとダークブルーに見えますが、日中の光だともっと明るくて華やかなブルーになる。時計を見る行為は、時刻を確認するだけじゃない。単に“時計を眺める”というのも楽しいひとときですが、CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲは、ケース構造もダイヤルの表現も楽しめる。よく考えられた時計ですよ、これは。
中森:ダイヤルがシンプルだから、そういう個性が見えてくる。ストラップや色、素材の使い方などが上手いから、シーンを選ばないのでしょうね。例えばモノトーンのスーツスタイルにこの色がすっと差し色として入るだけでも、とても素敵ですよ。
中森:「CODE 11.59」は、ピンクゴールド×ブラックセラミックのモデル。一目惚れですね。色々なスタイリングに合わせたい。グラデーションダイヤルのおかげもあってか、ピンクゴールドの華やかなケースなのにキラキラしてないのもいい。「ロイヤル オーク オフショア」は、初代モデルの復刻版。ドレス系のファッションが多いので、クラシカルな雰囲気がある時計に惹かれます。しかもこのモデルはチタンのケース&ブレスレットなので、つけ心地が軽いのもいいですね。
菊池:僕は「CODE 11.59」のブルーダイヤル。やっぱり、これ本当に綺麗なんですよ。晴れた日に見たら、完全にやられます。しかもシーンも選ばない。付属ストラップはないけど、ブティックでたくさん扱っているので、ストラップを変更してファッション的に楽しみたいよね。「ロイヤル オーク オフショア」はスモークブラウンダイヤルのモデル。ちょっと癖のあるところがたまらない。せっかくオフショアを選ぶなら、これぐらい存在感があってもいいんじゃないかな。
篠田:僕はホワイトゴールド×ブラックセラミックの「CODE 11.59」ですね。ブラックダイヤルが好みというのもありますし、モノトーンゆえにセラミックケースの艶感が際立っている。縦筋目のダイヤル装飾も新鮮味があります。逆に「ロイヤル オーク オフショア」はブルーのモデルかな。というのも黒文字盤の「ロイヤル オーク」をすでに所有しているので、オフショアはもうちょっとアクティブな雰囲気で楽しみたい。これだけ鮮やかなブルーなら、腕元が華やぐでしょう。このアクセサリー的な魅力に惹かれます。
エクリュなニットとホワイトパンツにネイビーのダブルジャケットを着用したスタイルに、ロイヤル オーク オフショアを合わせて。「大人のスタイルの“ハズし”の時計として最適ですね。足元もスニーカーにして、上品だけどアクティブでカジュアルな着こなしに」
ジャケット¥136,400、ニット¥53,900、パンツ¥49,500/すべてラルディーニ(トヨダトレーディング プレスルーム TEL:03-5350-5567)、シューズ¥143,000/ジョンロブ(ジョン ロブ ジャパン TEL:03-6267-6010)、サングラス¥28,600/ビナイン(エヌエスナイン TEL:03-5877-9442)、ベルト/スタイリスト私物
「ブラックが好み」という篠田がチョイスしたのはモノトーン調のCODE 11.59。「ドレスにもカジュアルにも似合う時計なので、上品なスラックスにレザージャケットを合わせました」
ジャケット¥136,400、ニット¥53,900、パンツ¥49,500/すべてラルディーニ(トヨダトレーディング プレスルーム TEL:03-5350-5567)、シューズ¥143,000/ジョンロブ(ジョン ロブ ジャパン TEL:03-6267-6010)、サングラス¥28,600/ビナイン(エヌエスナイン TEL:03-5877-9442)、ベルト/スタイリスト私物
「スモークブラウンのダイヤルが美しい」とロイヤル オーク オフショアはこちらの1本を選択。「時計はモダンで力強いデザインなのでデニムスタイルに。トップスはフーディー、チェックブルゾンとカジュアルなアイテムですが、洗練された時計の効果で上品な印象に」
ブルゾン¥71,500/アスペジ、シューズ¥80,300/ラルディーニ by ヨウスケ アイザワ(ともにトヨダトレーディング プレスルーム TEL:03-5350-5567)、ニットフーディー¥121,000、デニムパンツ¥85,800/ともにヘリル(にしのや TEL:03-6434-0983)
「グラデーションが素晴らしい」というブルー文字盤のCODE 11.59。「ダイヤルが美しいので洗練された上品なスタイルにしました。ウールの上質なコートにドレッシーな3針がマッチ。でもストラップはラバーなので綺麗すぎない程よいバランスに」
コート¥104,500/イーヴォ、ニット¥52,800/フィリッポ デ ローレンティス(ともにトヨダトレーディング プレスルーム TEL:03-5350-5567)、シューズ¥44,000/モトマチシューズ(クリエイション TEL:078-322-0028)、バングル(上)¥19,800、バングル(下)¥27,500/ともにアダワット トゥアレグ(アダワット トゥアレグ TEL:050-5218-3859)、パンツ、ソックス、メガネ/すべてスタイリスト私物
初代モデル復刻版のロイヤル オーク オフショアはスーツを着用。「スーツのインナーに、ニットポロを合わせたドレスカジュアルスタイルです。千鳥柄の明るいスーツに、時計のシルバーの色味がとても好印象を与えます」
スーツ¥169,400/ティト アルグレット、ニット¥29,700/エストネーション、シューズ¥126,500/エンツォ ボナフェ(すべてエストネーション TEL:0120-503-971)
「やらしさを感じさせない、華やかで上品な金時計」と中森が惚れ込んだ、ピンクゴールド×ブラックセラミックのCODE 11.59。「インナー、パンツを黒で統一し、レザーを際立たせるスタイリングです。時計の文字盤とベルトも黒でリンクさせました」
レザージャケット¥166,100/アヴィニョン、カットソー¥22,000、パンツ¥38,500/ともにコラム、シューズ¥35,200/エストネーション(すべてエストネーション TEL:0120-503-971)
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