“ハカセ”と呼ばれる時計業界のご意見番、時計専門誌「クロノス日本版」編集長、広田雅将が、“ならでは”のウンチクを織り交ぜて、
オーデマ ピゲについてレクチャー。今回はその成り立ちとアイコニックな時計について解説する。
2020年 04月13日
Photo:Koutarou Washizaki
1875年にスイス・ジュウ渓谷で創業し、高級腕時計メーカーとして名を馳せるオーデマ ピゲ。その誕生の背景には、意外なエピソードが存在していたと、広田さんは熱く語る。
「オーデマ ピゲというのは、今や世界的なブランドになったわけですが、この会社の成り立ちはすごく面白いんです。ほかの同じようなハイエンドなクラスにある時計メーカーは、例えば、経営者に貴族がいたとか、あるいは王侯貴族の恩恵を受けたとか、いろいろなパターンがあるんですけれども、オーデマ ピゲは、いきなり二人の若い時計師がいいものつくろうじゃないか、というところから始まっているんですね。
創業したのはジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲ。この二人が時計学校で仲良くなって、いい時計を作ろうじゃないかというところで、1875年に興ったのがオーデマ ピゲという会社です」
「1882年から1892年までの10年間、500個の懐中時計を作ったと言われて、そのうちのほぼ8割がなんらかの複雑機能を載せていたそうです。
つまりオーデマ ピゲは、ありきたりの普通の懐中時計は作らなかったんですね。それらの多くはクロノグラフであったりミニッツリピーターであったり、いわゆる複雑機能を載せた、他にはない時計だったのです。
そういった他にはない質の良い時計を作ることで、オーデマ ピゲはいい時計を作っていると認められて、たちまち世界的な名声を得たんです」
オーデマ ピゲの歴史を語る上で欠かせない、アイコンのひとつとなったロイヤル オーク。エポックメイキングな時計として、広田さんは次のように話す。
「ロイヤル オークは1972年に発表されたラグジュアリースポーツウォッチの走りですが、ケースはステンレスでできていて、当時は珍しかったブレスレットもついていました。ステンレスという素材は貴金属より丈夫という認識しかなかったのです。正直なところ、ダイバーズウォッチには使えるけど、高級時計には向きませんでした。
ロイヤル オークのデザインを担当したのは、時計界のピカソと異名をとるジェラルド・ジェンタ。フォーマルなのにスポーティーな時計は、どのようにして生まれたのか?
「オーデマ ピゲは薄型時計のつくりにすごく慣れているので、細い針やインデックスは薄型時計で使うのは当たり前だったんです。しかし、スポーツウォッチらしくベゼルを太くしたわけです。ベルトを留めるラグも一体化していますが、太いわけです。
そうなると、デザインはアンバランスになりますよね。そこで、どうしたかというと、この太いベゼルの上にビスを入れることによって、ベゼルの間延び感をなくしたんです。
時計のデザインというのは、明らかにそのシチュエーションに応じて作られています。しかし、ジェラルド・ジェンタは、この時計ひとつでいろいろなシチュエーションに対応できるように、細いところ、太いところのバランスをうまくとったんです」
スペシャルムービーでは、さらにロイヤル オーク オフショアについても紹介している。
「オーデマ ピゲは1993年のロイヤル オーク オフショアから26年ぶりに、純然たる新しいコレクションを発表しました。それがCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲの時計です。
ロイヤル オークみたいな、あるいはオフショアみたいな非常にわかりやすいデザインを持っているわけではないですが、個人的な意見を言うと、この時計はものすごくオーデマ ピゲらしいと思っています。
きちんと時計として作り込んでいる、かつ、他にないものを作っていくというオーデマ ピゲらしい姿勢の表れた時計です」
「オーセンティックな丸いケースに見えますが、実は横から見ると全然形が普通のラウンドとは違います。時計の真ん中のケース、ミドルケースも、普通、丸い時計はこの真ん中のケースを丸く作るわけです。けれども、実はミドルケースが八角形に成型されているんです。
まりどういう事かというと、この時計を腕に付けて自分で時間を確認する分には普通のシンプルな時計に見える。しかし、横から見る、あるいは斜めから見ると決して普通の時計ではないってことが分かるわけですね」
26年ぶりの新作CODE11.59 バイ オーデマ ピゲに秘められた、普通に見えて、実は普通ではない、斬新な“仕掛け”の数々。さらに動画では、その魅力について広田さんが迫る。
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