“ハカセ”と呼ばれる時計業界のご意見番、時計専門誌「クロノス日本版」編集長、広田雅将が、“ならでは”のウンチクを織り交ぜて、オーデマ ピゲについてレクチャー。
今回は歴史的なモデルを現代的に再構築した「リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」が誕生した経緯について、スイス本社コンプリケーション部門責任者のマイケル・フリードマンにオンラインにて話を訊いた。

Photo:Koutarou Washizaki

スイス・ジュウ渓谷にオープンしたオーデマ ピゲの新しいミュージアム「ミュゼ アトリエ」。その記念モデルとなる限定500本の新作「リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」は、1943年に製作されたクロノグラフ搭載の腕時計を再解釈したモデルだ。ヴィンテージウォッチの復刻を長らく手がけてこなかったオーデマ ピゲが、なぜこのような時計に取り組むことになったのか。

「オーデマ ピゲはミュージアムと同じように、過去の時計師と現代の時計師とをつなぐ時計プロジェクトを立ち上げたいと考えました。今なお続くオーデマ ピゲの持つストーリーや独立性、私たちの本質を表すようなプロジェクトです。つまりこのモデルは、単なるヴィンテージモデルの再現ではありません。デザインや外装を活かしながら、現代の人々が時計を楽しめるよう、2020年に合わせてアップデートしているのです」

単なる昔のモデルの復興ではなく、過去の創作を現代的にリマスターしたモデルであるそう語るマイケルさんに共鳴しつつ、実にオーデマ ピゲらしい時計だと広田さんは首を縦に振る。

「ありきたりなことはやらない、他のメーカーと同じことはやらないオーデマ ピゲですが、なぜ1943年のモデルの復刻に取り組んだのか。ちょうど1943年は、第二次世界大戦中でした。この時期は時間的な余裕もあり、各メーカーで良質な時計が生まれたそうです。そんな時代の希少価値の高い時計を、ただ復刻するだけではなく、あえてリマスター、リクリエイトするというのは、よほど自信がなければできないことです」

オーデマ ピゲのヘリテージコレクションには、すばらしい時計が数多く存在するが、このプロジェクトをはじめるにあたり、メンバーが全員一致でこの1943年のクロノグラフを選んだ。広田さんが言うように、この時計が醸し出すノスタルジックな美的感覚を見事に蘇らせ、現代のマニュファクチュールの最新技術を結集し、再解釈したことは、過去と今をつなぎ、過去をも超えるという、オーデマ ピゲの“自信の表れ”に違いない。

そんな「リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」にまつわる広田さんとマイケルさんの対談は、SPECIAL MOVIEにてぜひご覧いただきたい。

オーデマ ピゲ生誕の地、スイスのジュウ渓谷にオープンした新しいミュージアム。デンマークの建築事務所、BIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)設計によるスパイラル状のパビリオンは、何世紀にもわたり時計師にインスピレーションを与えてきた周囲の景観と違和感なくマッチする。

2世紀以上にわたる歴史をアーカイブした展示スペースには、希少価値の高い複雑機構を搭載した懐中時計からハイジュエリーウォッチまで、300本あまりもの膨大なコレクションを網羅。グランドコンプリケーションとハイジュエリーピースの製作に携わる2つの専用アトリエでは、先人たちからマニュファクチュールが受け継いできた職人技を紹介する。

オーデマ ピゲの“こぼれ話”をこちらで少々ーー。
「リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」のモチーフとなった1943年のクロノグラフ搭載の腕時計はもちろんのこと、オーデマ ピゲは他ではなかなかお目にかかれない野心的な時計を数多く生み出している。1882年のグランドコンプリケーションの懐中時計や、クォーツ時計が世間を席巻しているなかリリースされたパーペチュアルカレンダー搭載の自動巻きモデル、今では当たり前となっているが当時としては斬新だったスケルトン時計など、オーデマ ピゲらしい傑作について広田雅将が解説する。

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