アレクサンドラ・ピリチの「関係の百科全書」(オーデマ ピゲ コンテンポラリーのコミッション作品)は2023年12月にシカゴのルネッサンス ソサエティで「インターミッション」シリーズの一部として展示されました。

2017年にスタートした「インターミッション」は、パフォーマンスと時間をベースとした他の独創的な作品に特化した進行中のプログラムシリーズです。ピリチの「関係の百科全書」」の展示では、6人のパフォーマーがルネッサンス ソサエティの新たな空間で、人間同志の相互関係、その他のユニットの相互関係など進行中の様々な関係について新たな表現に取り組みます。

アレクサンドラ・ピリチは歴史と社会構造について考えさせる現在進行形のパフォーマンスアクションの演出で知られます。訓練を受けた舞踊家であるピリチは、ダンサーたちを集めパフォーマンスグループをつくり、ライブスカルプチャーを演じ、動き、歌うというようなパフォーマンスを演出します。彼女の仕事は長期間にわたって継続、発展するアクションとして評価されています。固定されていると思われたものが流動的に動き出すという現象に焦点を当てています。

ビエンナーレ アルテ2022のピリチの作品は、百科全書という概念へのトリビュートであると同時に挑戦でもある渾身のプロジェクトです。エンサイクロペディア(百科全書)というのは私たちの世界の原則や要素を厳密に分離された個体として扱い、分類してきちんと整理します。ピリチの作品は、それぞれの要素の間にある関係にフォーカスし、より深い複雑性を理解しようとするものです。

「関係の百科全書」は舞踊と動きを通して世界がその内部でコネクトしていることを強調し、知識というものが常に転換、進化していることを示します。6人のパフォーマーが、世界のさまざまな相互作用や関係を通じて次々に自らを新たな形と構造に転換し、一つのものから別のものへ、動きとサウンドと言葉の中で流れるように形を変えて行きます。作品は音楽、文学、詩、数学などの要素も持ち込むと同時に、自然の世界と超現実の世界の融合をも試みます。

進行アート作品「関係の百科全書」は、新たな要素や関係を取り込むことができます。時間の経過を通じて様々なやり方で呼応しつつ蓄積して「エンサイクロペディア」を「完成」させて行きます。

関係というものは流動的で幾度も作り直され、生命体や要素が外観的にはいくら離れていても、より大きな全体の中では離れることができない共存の内にあります。

アレクサンドラ・ピリチ

アーティスト

Portrait of Alexandra Pirici

アレクサンドラ・ピリチ(1982年ルーマニア、ブカレスト生)は舞踊と振り付けをバックグラウンドに持つアーティストで、ビジュアルアートと現代パフォーマンスアートの分野で活躍しています。彼女の作品は世界各地で展示されています。ヴェネツァ ビエンナーレで2回(2022年の第59回国際アートエキシビション「夢のミルク」、2013年の第55回ルーマニア パビリヨン展示)、2017年スクルプチュール プロジェクテ ムンスターのディセンナーレアートエキシビション展示など。またニューヨーク ニューミュージアム、アートバーゼル メッセプラッツ、第9回ベルリン ビエンナーレ、マニフェスタ10、テイト モダン ロンドン、パリ ポンピドゥーセンター、ミュージアルム リュドヴィッヒ コロン、ヴァン アベミュージアム アイントホーヴェン、NTU CCAシンガポールなど多くの個展やグループ展示、エキシビションを行っています。

アレクサンドラ・ピリチはミュージアム展示用、公開スペース用、時には劇場用などいくつかの枠組みで展開しています。その振付は、進行中のアクションやモニュメント的パフォーマンス、環境的パフォーマンスとして表現され、舞踊、彫像、言葉、音楽などの要素をミックスさせた中で進行します。モニュメント性やある特定の場所や機関の歴史をとりあげ、ユーモアを交えながらそこにある階層構造を覆して表現します。その考察は歴史、芸術と大衆文化における動作のもつ機能、身体とその存在について、その不在、イメージ、それらを捉えるポリシーについて問いかけます。パフォーマンスを盛り込んだ作品は、ライブアクションとしての私的または一般公開のコレクションの一部です。

2023年2月からミュンヘンの美術大学(ミュンヘンAdBK)で、現代美術パフォーマンス学の最初の教授となりました。